唇の皮膚の特徴。肌と比べて唇が乾燥しやすいのは性質上仕方がない

唇について、皮膚の特徴などを調べてみました。

特徴を知ったところで「唇の乾燥が防げる」わけではないのですが、肌との違いを理解しておくと、肌以上に唇が荒れやすいことに対して多少寛容になれるような気がします。

唇の特徴

唇は、口腔粘膜と皮膚の境界に位置する中間部分であるため、粘膜と皮膚の両方の性質を持っている。
唇は粘膜に近い性質を持つため、顔の皮膚に比べて角質が非常に薄く、ターンオーバーが速く、汗腺や皮脂腺がなく皮脂膜やNMF(天然保湿因子)が少ないので角質水分量が少なく乾燥しやすい。
メラニンもほとんどなく、毛もなし。

唇と、他の部位の皮膚との比較

  • 【皮脂膜】唇:なし、皮膚:あり
  • 【汗腺】唇:なし、皮膚:あり
  • 【角層】唇:極めて薄い、皮膚:厚い
  • 【ターンオーバー】唇:速い、皮膚:遅い
  • 【メラニン量】唇:少ないまたはない、皮膚:多い
  • 【毛】唇:なし、皮膚:あり
  • 【NMF量】唇:少ない、皮膚:多い
  • 【水分量】唇:少ない、皮膚:多い
  • 【水分蒸散速度】唇:速い、皮膚:遅い

上記からも、皮膚と比べて唇は性質上デリケートなので、基本的に荒れやすい部位であることがわかります。

唇が荒れる過程(変化)

唇から水分が逃げる

唇が乾燥(角層レベル)

→唇の縦ジワが増える、唇表面が硬くなる

更に唇表皮の水分量低下

→角質層が浮く、剥がれる(かさつき、粉ふき、皮剥け)

更に唇表面が硬化

→唇に割れ発生

→割れが深部まで進むと切れ(亀裂)発生(痛みや出血を伴う)

更に乾燥の激化+アレルギーや炎症により

→唇の腫れ、水疱、かゆみ、痛み発生

唇の荒れ方の違い

唇の内側(粘膜側)は粘膜的な性質、外側(皮膚に近い部分)は皮膚的な性質が強くなる。
そのため、唇の内側と外側で荒れ方が異なる。

  • 内側:角質が厚く硬くなり、大きなシート状になって剥がれる(硬化剥離)
  • 外側:白く細かい粉をふいたようになる(小落屑)

唇の内側に硬化剥離が起こりやすいのは、粘膜型の角質を構成するケラチンが表皮型のケラチンよりも乾燥に弱く、すぐに硬くなってしまうため。
(※ケラチン:タンパク質の一種)

硬くなった角質層について

硬くなり剥がれかけている角質層は水分の蒸散を抑える機能を失っている。
これを無理に剥がすと角層が傷んで唇の保湿性能が更に低下したり、ひどい場合は真皮まで傷つけてしまう。

硬くなった角質を除去する場合は、角質を柔らかくした後、ガーゼ等で優しく拭き取るのが良い。
この辺りは慎重に。

通常の唇と荒れた唇、角質細胞の違い

通常状態の唇と荒れた唇では、角質細胞に違いがあります。

通常の唇の角質細胞

  • 角質細胞は細かい毛のような突起と穴状の凹みが存在(凹凸がある)
  • 有核細胞の数が多い

角質細胞の形成に異常が生じた皮膚の細胞形状と類似している。
肌でいうと、ターンオーバーが速くて出来上がった未熟な角質細胞(有核細胞)と似たものが、唇では正常な細胞であるということに。
(なんてこと…!)

「唇はターンオーバーが速い」ことから、角質細胞の有核率が高くなることについては納得です。

荒れやすい唇の角質細胞

  • 角質細胞の形は扁平なものが多い
  • 角質細胞の面積が大きい

角質層の最上層において、落屑が正常に行われていないため、重層状態。
古い細胞が脱落せずにいつまでも唇上に残存している。
(肌でいうところの「老人性乾皮症」と類似の傾向)

つまり、唇の正常なターンオーバーが行われず古い角質が唇の表面に留まっている状態が唇の荒れの原因である、と。

古い細胞が脱離する機構
ターンオーバー過程で細胞同士の接着に関わる物質(デスモソーム)が酵素によって分解されることで、角質層の最上層で細胞が剥がれる。
唇が荒れている場合、デスモソームを分解する酵素(カセプシンD様酵素)の活性が低く、分解機構が正常に働かない。
(水分が充分にない環境下では酵素が活性低下を起こすためと考えられている)


つまり……

唇の角質層の硬化(落屑せず積もった古い角質層)→細胞同士の接着が分断されずに角質層がくっついたまま→剥がれる必要のない下層の角質細胞まで道連れに落屑→もっと乾燥→ふりだしに戻る

これだと、皮剥けは延々「治らない」ことになりますね。(恐怖!!)
肌のターンオーバーとは異なる性質を持つので、唇のターンオーバーを正常化するためには、また別のアプローチが必要になるのかもしれません。

今回の参考文献

こちらの本から大部分抜粋、まとめました。

「唇の水分を逃さない」ための保湿&保護のケアが大事とのこと。
個人的に「何かを塗る」ことに抵抗がありますが、それについてはまた改めて調べてみます。

追記

後日、実際に保湿ケアについて実験し、考察しました。


追記:唇の皮剥け改善ヒントのチェック項目を作りました

対処を始める前段階の現状把握としてお役立てください。


おわりに

唇に関して、自分の認識とは逆でした。
剥脱性口唇炎に今後どう対処していくか悩みます…。